2015年8月14日金曜日

くせ

人間誰しも多かれ少なかれ何らかの「クセ」がある。

生田がその女性のクセに気づいたのは新しいサークルに行ってすぐ、最初にホールドしたときだった。

生田のかざした左腕に「トントン」とリズムを刻むのだ。

どの指でどうしているのかはわからないが確実に終わりまで刻み続けているのだった。

新しいサークルに入ってすぐと言ったが、厳密に言うと覚え始めた数年前にさかのぼることになる。


背の低い、目立たない女性だった。
ちょうど休憩の時間、その人は語るともなくつぶやいた。

「もう来るのやめようかなって何度も思うのだけど、ここまで来たのだからもう少し頑張ってみようっていつも自分に言い聞かせてるのよ」

話しながら右手でペットボトルを「トントン」していたことを思い出したのだった。

あのときにはそんなに気にならなかったが、今度組んでみるとそのクセには正直驚かされるのだった。

ほかの男性と組んだときもそうしているのだろうが、まさか聞くわけにもいかずにいた。

生田は結局その新しいサークルも都合がつかなくなりやめている。

それでも、あの女性は
「ここまで来たのだからもう少し頑張ってみよう」と、いまも指先をトントンしているのだろうか?


関連参照:
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